クーバース

名前の起源にはいろいろな説がありますが、「保護する者」を意味するトルコ語の「カバス」に由来するのではないかといわれています。15世紀後半には、ハンガリーの貴族に広く愛されていました。中でもマティアス王(1458-1490)は、家臣よりも飼い犬の方が信頼できると言ったほど、クーバースをかわいがったそうです。当時はクマやイノシシなどの大型動物の狩り用に訓練されました。また、王族の贈り物としてもよく用いられたようです。もっとも古い記述は、16世紀にさかのぼります。その後、村人の家畜番として用いられるようになりました。この犬種は、姿の似た牧羊犬、たとえばポリッシュ・タトラ・シープドッグ、マレンマ・シープドッグ、グレート・ピレニーズ、アナトリアン・シェパードなどが生み出されるきっかけになったといわれています。ハンガリーの牧畜業者は、この犬を連れて牛をよその国まで売りに出かけました。そのような旅の途中、土着の犬と交配して子供をつくることもあったようです。また、用がすむと、そのまま放っておかれることもありました。第二次世界大戦の終わりには、クーバースはたった30頭ほどに減ってしまいました。ブリーダーが集まって力を尽くし、この高貴な犬種はみごとに復活したのです。今日ではおもに家庭犬や番犬として飼われています。

均整のとれた堂々とした体格の牧羊犬で、とてもかわいらしい顔立ちです。ストップ(両目の間のくぼみ)がはっきりとしています。マズル(鼻口部)は黒い鼻の方にかけてやや先細りになっていますが、とがってはいません。唇と口の中も黒い色です。歯はシザーズバイト(上歯が下歯にややかぶさるはさみ状の噛み合わせ)がよいとされています。V形の耳は垂れています。目はアーモンド形で、色は暗色です。骨格は太からず細からず、体高に対して体長の方がやや長めです。がっしりしていますが、大きすぎる体を持てあましているような感じではありません。足取りは軽く、大柄なわりに機敏です。下腹はぐっとへこんでいます。足もとは猫のようにきゅっと締まっています。ダブルコートの毛は白またはアイボリー、肌は暗色が普通です。肌の色は濃いほどよいとされます。中ぐらいの長さの毛は直毛かウエーブがかかっていて、厚いアンダーコート(下毛)があります。あごの下の毛は豊かで、首から胸までふさふさと生えています。冬にはさらに毛が豊かになります。 顔と足は短い毛です。四肢の後ろの毛はふわふわしています。

初心者が飼うにはむずかしい犬種です。体が大きく、警戒本能が強いので、飼い主は責任を持って世話をしましょう。長時間、庭などに放っておかれると、乱暴になることがあります。徹底的に運動させてあげると、エネルギーを発散できるので、噛んだり穴を掘ったりすることはなくなるでしょう。外で鎖につなぎっぱなしにしないでください。行儀が悪くなるかも知れません。柵のある広い庭がベストです。犬小屋と新鮮な水をあげれば、寒いときでも戸外で過ごせます。被毛が厚いので、暑さや湿気には耐えられません。日陰を作り、水をたくさんあげてください。寒冷地では換毛の季節に毛が抜けるだけですが、暖かい気候では一年中抜け毛が出ます。あまり頻繁に入浴させないでください。毛には汚れを自然に落とす脂分が含まれています。洗うとその脂分も落ちてしまい、体を洗えば洗うほど汚れがつきやすくなります。その代わり、まめにブラシをかけてあげてください。毛をきれいにする方法としては、コーンスターチやパウダーをすりこんでから、もう一度ブラシをかける方法もあります。耳の後ろの毛がもつれていないかどうか、見てあげてください。トイレのしつけはしやすいでしょう。牧畜犬にすることをお望みなら、専門の訓練が必要です。訓練方法はプロに教わってください。生後6、7週の子犬の頃から、将来番をする相手の動物と一緒に過ごさせるのがよいとされています。そうすることで、その動物との間にきずなが生まれるのです。家畜をこわがらせたり追いかけたりしない優しい性格の ワンちゃんなら、家畜の見張り犬にぴったりです。鼓脹症や股関節形成不全に気をつけましょう。また、肩関節の離断性骨軟骨症(炎症を起こし足が不自由になる病気:OCD)にもかかりやすいです。大型犬の場合、食べすぎて太ると、股関節形成不全や離断性骨軟骨症の危険が大きくなります。皮フ病やアレルギーにも気をつけましょう。

賢くて好奇心旺盛。向こう見ずなところがあり、勇敢で意志が強く、恐れを知らないワンちゃんです。警戒本能もなわばり意識も強いので、すぐれた警備犬になります。なわばりや人をしっかり守ろうとします。飼い主の家族に忠実です。しかし独立心も強く、飼い主と強いきずなを結んでいても、よそよそしい態度を見せるときがあります。このワンちゃんをお子さんと一緒に育てるなら、できれば子供好きの両親から産まれた子犬を選んでください。飼い主の家族のお子さんには優しく我慢強いのが普通ですが、他人の子供には気を許しません。事故を防ぐためにも、お子さんとその友だちがワンちゃんと遊ぶときは、目を離さないようにしてください。社交的かどうかはさまざまですが、ほとんどの場合、知らない人にはなつかず、気を許しません。極端に警戒心の強い性格を直すには、小さい頃からいろいろな環境に慣れさせてあげてください。経験豊かで強いトレーナーが厳しく訓練して、飼い主の家に来るお客さんを上手に迎えられるように教え込まなければなりません。もともと人間の指示を受けずに作業するよう育てられてきたので、訓練競技向きではありません。強情ですが、叱られると傷つきます。厳しくあたったりしないようにしましょう。若いワンちゃんは飼い主の力を試すようなことがあります。家族全員で、このワンちゃんとの付き合い方を覚えてください。子犬の頃から知らない人にも慣れさせるようにしましょう。このように心掛けていると、獣医師に見せるときにも、またショーに出場させるときにも役立ちます。購入の際は、できれば両親について調べた上で、子犬は注意深く選んでください。ブリーダーの中には、攻撃的なのをよしとする人もいるので気をつけてください。子犬は他の動物も受け入れやすいのに対して、成犬はかなり攻撃的です。自分の家に新しい犬や他の動物が入ってくると、激しく怒るときもあります。新しい仲間は家族の一員なのだとワンちゃんに教えてあげましょう。絶対にケンカしないと確信が持てるようになるまでは、新しい犬と成犬のクーバースがいっしょにいるときに目を離してはいけません。オス同士はよくケンカします。