スコティッシュ・ディアハウンド

スコティッシュ・ディア・ハウンドは、中世スコットランドの氏族の族長たちが鹿狩りに使っていた犬です。スコットランド貴族の間でたいへんな人気を博し、スコットランド王家御用達の犬となりました。伯爵より下の位の者はこの犬を飼うことを許されませんでした。やがて銃によるハンティングが始まって農地が塀で囲まれるようになり、鹿狩りに必要な広い土地が減ってしまいました。また、スコットランドの氏族制度も衰退し、スコティッシュ・ディアハウンドは廃れてしまいました。犬種は絶滅の危機に瀕します。しかし1800年代には再び人々の関心を呼び、血統は守られました。それに貢献したのがアーチボルトとダンカンのマクニール兄弟です。ビクトリア女王もディアハウンド愛好家となり、詩人のサー・ウォルター・スコットもこの犬を飼っていました。第二次世界大戦下の英国で大型犬を養うのはとても困難で、多くの人々が食糧難から犬を死なせてしまいましたが、熱心なディアハウンド愛好家たちは、なんとかこの犬種を守り抜きました。今日ではこの敏捷なサイトハウンド(視覚獣猟犬)は人気のコンパニオンドッグ(伴侶犬)です。いまだにウサギやコヨーテ猟やルアコーシングに使われることもあります。

スコティッシュ・ディアハウンドは背の高いスリムなサイトハウンドです。長さが10cm近くあるもじゃもじゃの被毛で、あごひげと口ひげとたてがみがあります。粗いワイヤー状の毛はグレー(ブルーグレーが望ましい)、薄い黄みがかった色、ぶちなど様々な色合いがあります。暗色の耳と先が細い暗色の鼻梁をしています。胸、足、尾に小さく白色が入るのも認められています。体の下部と頭の毛はほかの部分よりやわらかです。目は栗色か淡い褐色。鼻は暗色です。小さなストップ(両目の間のくぼみ)があります。歯はレベル・バイト(上歯と下歯がぴったり合う噛み合わせ)でなければなりません。柔らかな耳は普段は頭にそって後ろに寝ています。興奮したときに耳は半立ちになります。体は大きなグレーハウンドに近く、まっすぐな前脚、弓なりになったパワフルな腰、腹部は細くなっています。まっすぐまたはカーブした長い尾は地面につくほどの長さです。

鼓脹症になることがあります。たくさんの運動が必要ですが、安全な場所以外では引き綱を離さないようにしましょう。非常に俊足で獲物を追うのが大好き。珍しい鳴き声を出します。十分に走り回れる大きな庭があったほうがいいでしょう。運動が十分であれば集合住宅でも飼えます。サイトハインドに分類されていますが、スコティッシュ・ディアハウンドは優れた嗅覚も備えています。

優しく人なつこい犬です。静かでやさしい平和主義者。勇敢で威厳があります。献身的で忠実。頑固な面もあり、命令になかなか従わないこともあります。ただし生来は、行儀のいい犬です。小さな子や乱暴な子でなければ、子供ともよい遊び相手になります。見張りや番犬には向きません。