歴史
ブラック・ロシアン・テリアは、1950年代にロシアの軍隊によって品種開発が始められました。その目的は、忠実で、ロシアの厳しい冬にも負けない「最強の番犬」を作ることでした。選りすぐられたジャイアント・シュナウザーとエアデールの交配種が、エアデールとロットワイラーの交配種やジャイアント・シュナウザーとロットワイラーの交配種とかけ合わされました。最終的には、およそ17種の犬種がかけ合わされました。1957年に盛大に開かれた全ロシアドッグショーで新種が品評会に出されたことがきっかけとなって、個人ブリーダーの間で関心が高まりました。当時の政情により、軍では個人ブリーダーに犬を売却することができました。犬を買い取ったブリーダー達は、ブラック・ロシアン・テリアを一般社会になじませるため、気質、知性、忠誠心、しつけのしやすさといった面で改良を進めました。また、60年代と70年代には、他種との最後の交配が行われました。現在では、社会性を身に付け、きちんとトレーニングを受けたブラック・ロシアン・テリアは、家庭の立派な番犬となります。国際畜犬連盟(FCI)のブラック・ロシアン・テリアの基準は、1983年に定義されました。アメリカでは、1991年に初めてこの犬種が品評会に出され、現在は、アメリカン・ケンネル・クラブ(AKC)のミソレイニアス・クラスに認定されています。
特徴
ブラック・ロシアン・テリアは、筋肉質で骨がしっかりした、たいへん大きい黒犬です。その毛はくしゃくしゃのダブルコートで、全身を被っています。広くてずんぐりとした頭は、横から見ると平行な2つの平面で、ストップ(両目の間のくぼみ)ははっきりとしています。マズル(鼻口部)の幅は、頭蓋の80%くらいです。耳は高い位置にあり、小さな三角形で、折れ曲がって頬近くまで達しています。鼻は大きくて黒く、歯はシザーズバイト(上歯が下歯にややかぶさるはさみ状の噛み合わせ)です。唇は黒く、垂れ下がっていません。歯茎も黒く、舌に黒点があることがあります。首は、太くて筋骨たくましく、ほとんどたるんでいません。キ甲(肩間の背の隆起)は緩やかに下がり、平らな背中へとつながっています。高い位置についた尾は断尾し、3~5個の尾椎を残します。前躯と後躯はともに筋骨たくましく、足はまっすぐ。肩甲骨と上腕の間の角度は、100~110度です。前脚の足首からひじまでの長さは、キ甲の高さの 約53~54%です。後足の狼爪は取り除かなければなりません。被毛はくしゃくしゃのダブルコートで、粗いオーバーコート(上毛)(約3.8~10cm)の下に、やわらかく厚いアンダーコート(下毛)が生えています。被毛のトリミングは、たいへん困難です。色は、真っ黒か、灰色の毛が混じった黒でなければいけません。足取りはのんびり。はずむように、滑らかに歩きます。オスは筋骨たくましく、メスはしなやかでありながらもどっしりとしています。
飼育のポイント
ブラック・ロシアン・テリアは、集合住宅での飼育に適応していますが、運動は十分にさせる必要があります。アメリカでは、かなり入手しやすくなっています。悪徳ディーラーが偽造証書をつくって販売することがあるので、購入する前に、いくつかの機関に照会したり、全国規模のブリードクラブに問い合わせるのがよいでしょう。質の高いブラック・ロシアン・テリアの子犬を購入するには、数年待たなければならないこともあります。抜け毛はふつうの犬より少なめですが、他のテリアよりは少し多めです。被毛は、ほとんど無臭に近いとの報告もあります。この犬種は、少なくとも週に1回のグルーミングと、年に数回のプロによるグルーミングが必要です。毛並みをきちんと整えるために、最初の数回のグルーミングはプロにしてもらうのがよいでしょう。ショーのためのグルーミングには、6時間を要することもあります。他の大型種と同様に、股関節と肘関節の形成不全になる傾向があります。父犬、母犬ともに、動物のための整形外科基金(OFA)に認定されていることを確認してください(残念ながら、ロシアでは犬の股部のレントゲン検査はほとんど行われておらず、肘部についてはまったく行われていません)。不具になることのないよう、生後の最初の数か月は発育速度を抑えます。アジリティー競技やジョギングなどの運動をさせるには、骨が十分に発育して負担がかからなくなるまで、1年半~2年ほど待ってください。
性格
たいへん勇敢で自信に満ち、物静かで、安定した気質です。人を喜ばせたり働いたりするのが好きなため、よく学習する、たいへん知性の高いワンちゃんです。周囲をよく観察しています。頑固な面もあり、力づくは通用しません。きちんとトレーニングしないと、支配心が強くなったり、しつこい性格になることもあります。成長には時間がかかります。1歳半~2歳ぐらいにかけて防衛本能が芽生え、それ以降は家族や家、農場などを守るようになります。飼い主を、心身ともに助け、サポートしようとします。見知らぬ人が近付いてくると教えてくれる、優れた番犬です。知らない人への接し方は、飼い主のその人への接し方に見習います。ただし、同じ人が何度家にやってきても、家族以外の人への警戒心を怠ることはありません。飼い主の子供を、他の子供達から守ろうとすることがあるので、子供と一緒にいるときは、決して目を離さないでくさい。また、子供達の見張り番をしてくれようとすることもあります。警戒心に富み、縄張りを守る傾向があり、家畜に対して穏やかであるため、農場の番をさせるのに最適です。他の番犬と異なるのは、家族と一緒にいなければならないという点です。犬舎で飼う犬ではないので、ひとりぼっちにし過ぎると、攻撃的になることがあります。この15年間で、ブラック・ロシアン・テリアの気質は、ずいぶん柔らかくなったため、以前に比べると、子供がいても快適に過ごせるようになりました。社会性をよく学ばせることが、順応させるコツです。早い時期に、他の犬や人によく慣れさせましょう。さもないと、家族以外の人の言うことを聞かなくなるおそれがあります。通常、散歩中にケンカを始めることはありませんが、オス同士では、同じ家に飼われているかどうかに関わらず、優勢攻撃が見られたとの報告もあります。