ブービエ・デ・フランダース

ブービエ・デ・フランダースは、もともと牧羊犬でしたが、第一次世界大戦時は、救助犬やメッセンジャー犬としても盛んに用いられていました。戦場で盛んに使われ、しかもフランダース地方戦争でほぼ壊滅状態になったこともあり、この犬種は数が激減してしまいました。戦後になり、数人の手により、ブービエ・デ・フランダースの「復活」が図られ、ベルギーにブリーダーのクラブが設立されました。ブービエ・デ・フランダースとは、「フランダースの牛飼い犬」という意味です。現在では、この犬種は、護衛犬、家族のパートナー、トラッキング犬として用いられるほか、盲導犬としても活躍しています。

ブービエ・デ・フランダースは、パワフルで印象的な犬です。頭部は深い毛で覆われており、その長いひげやまゆ毛は、非常に特徴的な印象を与えています。幅の広い迫力のあるマズル(鼻口部)は、大きくて黒い鼻頭の方に向かって細くなり、鼻孔は開いています。楕円形のダークブラウンの目は、強情そうでもあり、警戒しているようにも見えます。鼻の色は黒です。歯はシザーズバイト(上歯が下歯にかぶさるはさみ状の噛み合せ)をしています。肩から臀部までの長さと地面からキ甲(肩間の背の隆起)までの高さはほぼ同じで、四角い体形をしています。胸は広くて深く、毛は肘部まで伸びており、体は二重の被毛で覆われています。ざらざらして乾燥した手触りの粗くて深いオーバーコート(上毛)とその下に軟らかくて密集したアンダーコート(下毛)があります。毛は厳しい気候から犬の体を保護する役目をしています。毛の色は、基本的には黒、灰に黒のまだら、もしくは灰のまだらです。淡黄褐色の毛や、胸に白い星があるものも認められます。尾は通常垂れており、耳はある場所で断耳しますが、いまでは、断耳せず、自然のままにしているブリーダーも多くいます。

深い被毛はこまめな手入れが必要です。人の群れの中では、すばしっこく行動することがあります。苦痛には非常に強い方ですが、股関節形成不全に罹患しやすい傾向があります。ブービエ・デ・フランダースは体や心の成熟が遅く、成犬になるまでに2~3年を要することが普通です。ベルギーの血統のものは、オランダの血統のものよりも小型で体重も軽い傾向があります。

快活な性格で、勇敢な護衛犬です。威圧感はありますが、実際は気だてがよく、やさしい性格をしています。辛抱強く、ものおじしません。子犬のうちから人になれさせると、成犬になったときに、わけもなく人を怖がったり、人見知りすることはありません。家庭のペットとしても適しており、子供とも仲よくすることができます。忠誠心があり、一生懸命に責任をもって作業をします。オーナー様が初心者の場合、支配関係で問題を起すことがあるかもしれません。服従は早い時期にしつけてください。他の動物との相性は、個々の犬の気分や性格により異なります。しかし、犬以外のペットがいる場合は、注意が必要です。支配力の強い犬は、他の犬に対して攻撃的になりやすいことがあります。