マスティフ

この犬はすでにローマ人侵略の時代から英国にいたのがわかっています。おそらく紀元前6世紀ごろフェニキア商人たちの手で英国に連れてこられたものと思われます。それ以来、ローマ人たちによって闘技場で牛や熊と闘わせる残虐な競技用の闘犬として使われたり、牧羊犬、警護犬、警備犬、家庭犬として飼われたりしました。アメリカには最初メイフラワー号に乗って1頭のマスティフが連れてこられましたが、その後つぎつぎと輸入されました。英国では、第2次世界大戦の末期までに、ほとんど絶滅に近い状況になりました。しかし、戦後アメリカやカナダから新たに輸入され、今日では英国でも1つの犬種として再び立派に確立されています。

体重の重い犬種の1つで、オスの場合、90kg以上になることがあります。非常にがっしりとして力強く、筋骨たくましい犬です。頭部は重く角張っており、短いマズル(鼻口部)をしています。体の毛色と関係なく目と鼻の周囲は黒色で、まるで黒いマスクをつけたようです。耳は小さく黒っぽい色をしています。歯はシザーズバイト(上歯が下歯にややかぶさるはさみ状の噛み合わせ)か、わずかにアンダーショットバイト(下顎が上顎よりも突き出ている噛み合わせ)です。尾は高い位置につき、先細になっています。被毛は短く、毛色は斑、淡黄褐色、あんず色など。グルーミングしやすい毛並みです。

股関節形成不全に注意してください。よだれをたらしたり、ぜいぜいしたり、高いいびきをかいたりする傾向があります。食事を与えすぎないようにしましょう。子犬のころからよく人や他の犬に慣らすしつけが必要です。定期的に運動させてください。仲間のようにたくさん一緒に遊んでやる必要があります。

獰猛な警備犬や闘犬としての能力に高い評価を受けていたのですが、本来は温和な巨犬です。穏やかで落ち着きがあり従順で、子犬のときから一緒であれば子供との相性は抜群です(ただし体が大きすぎるのでヨチヨチ歩きの幼児と一緒にはおすすめできません)。性格はとてもよいのですが、たいへん大きく体重の重い犬です。優しく忍耐強いしつけをすれば、よく応えてくれます。人を喜ばせることが好きです。他を支配しようとする性質は、血統によって実にさまざまです。知らない人にはよそよそしい場合も、人なつこい場合もあります。決して叩いてはいけません。叩いたりすると後で困ったことになりかねません。生まれながらの警備犬で、勇敢で忠実です。侵入者を攻撃するというよりは、追い詰めて逃がさないほうです。防衛本能を持ち合わせているので、そのための訓練はいりません。家や家族、車に対して強い独占欲をもっています。子犬の頃から人や他の犬によく馴らしておかないと、他の犬とケンカしやすくなります。